目 的:硝子体手術を必要とする網膜硝子体疾患を有する患者の血清抗酸化力と術中に得られた硝子体中抗酸化力について検討する.
対象と方法:対象は東邦大学医療センター佐倉病院にて,2009年10月~2012年12月の間に硝子体手術適応となった27例27眼(男性11例,女性16例)で,疾患の内訳は増殖糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy:PDR)9眼,網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion:BRVO)9眼,黄斑円孔/黄斑前膜(macular hole:MH/epiretinal membrane:ERM)9眼である.MH/ERM群を対照群とした.血清サンプルは,術前日に採取した血液を血清保存した.硝子体サンプルは,手術開始時の灌流前に硝子体カッターで硝子体液約0.5 mlを採取した後に,遮光冷却保存した.各サンプルの抗酸化力は,フリーラジカル解析装置(FREE®)を用いて,第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元できるbiological antioxidant potential(BAP)値を測定し,これを抗酸化力と定義した.検定には,paired t-test,analysis of variance(ANOVA),Turkey-Kramer testを用いた.
結 果:PDR群の血清·硝子体BAPは対照群と比較し有意に低値であった.BRVO群の硝子体BAPは,対照群と比較し有意に低値であった.PDR群のみ,硝子体BAPが血清BAPに比べ有意に低値であった.全27例の血清·硝子体BAP値に有意な相関を認めた.
結 論:PDRにおいては血清および硝子体中の抗酸化力に差を認めた.虚血性網膜硝子体疾患では,特に眼局所で抗酸化力が低下していることが示された.(日眼会誌118:633-639,2014)