論文抄録

第118巻第8号

臨床研究

結膜封入嚢胞の臨床的特徴と外科的治療についての検討
山田 桂子1), 横井 則彦1), 加藤 弘明1), 寺尾 信宏1)2), 丸山 和一1)3), 木下 茂1)
1)京都府立医科大学視覚機能再生外科学
2)市立福知山市民病院眼科
3)東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座眼科学分野

目 的:結膜封入嚢胞の臨床的特徴と外科的治療について検討する.
方 法:細隙灯顕微鏡所見と前眼部光干渉断層計所見から結膜封入嚢胞と診断した34例37眼を対象にレトロスペクティブに検討した.
結 果:嚢胞は眼球結膜の鼻側に最も多く(64.9%),13眼(35.1%)で複数個存在し,10眼(27.0%)で穿刺の既往があった.嚢胞と周囲組織との癒着は9眼(24.3%)でみられ,穿刺の既往がある眼では10眼中5眼と,既往のない眼に比べて癒着がみられることが有意に多かった(p<0.05).また,癒着がみられなかった28眼では,それがみられた9眼に比べて一塊として嚢胞を摘出できることが有意に多かった(p<0.05).摘出した病理組織では,16眼で杯細胞を,4眼で軽微な炎症細胞を認めたが,既報に矛盾しない所見であった.
結 論:本疾患は眼球結膜の鼻側に多くみられ,穿刺の既往がない場合は,周囲組織との癒着がみられることが少なく,一塊として低侵襲的に摘出できる可能性が高いと考えられた.(日眼会誌 118:652-657,2014)

キーワード
結膜封入嚢胞, 前眼部光干渉断層計, 低侵襲治療, 杯細胞
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