論文抄録

第119巻第10号

臨床研究

東京医科歯科大学眼科におけるぶどう膜炎臨床統計―1998年~2001年と2007年~2011年の比較
宮永 将1)2), 高瀬 博1), 川口 龍史1), 鴨居 功樹1), 清水 健太郎1), 横田 眞子1), 杉田 直3), 望月 學1)
1)東京医科歯科大学(TMDU)大学院医歯学総合研究科眼科学
2)東京都立広尾病院眼科
2)理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト

目 的:近年,分子免疫学的手法の進歩により,ぶどう膜炎の診断に変化が生じている.過去と現在の東京医科歯科大学眼科におけるぶどう膜炎の臨床像を解析し,その変遷を検討する.
対象と方法:1998年10月から2001年12月までと2007年1月から2011年12月までに当院を受診したぶどう膜炎初診患者を対象とし,その臨床像と原因疾患の内訳を調べて比較した.
結 果:ぶどう膜炎患者は1998~2001年,2007~2011年でそれぞれ455例(707眼)と1,091例(1,716眼)であった.初診時年齢はそれぞれ平均45.4歳と50.3歳であった.原因疾患の割合は,それぞれサルコイドーシスが11.0%と13.7%,Vogt-小柳-原田病が5.7%と5.9%でほぼ変わりなかったが,Behçet病が10.6%であったのが5.8%と半減していた.また,2007~2011年ではヘルペス性虹彩炎の割合が1.8%から4.7%へ,眼内リンパ腫の割合が0.4%から2.6%へと大きく増加していた.なお,分類不能の割合は55.6%から47.5%へと2007~2011年では減少していた.
結 論:ぶどう膜炎診断法の変化や新しい疾患概念の出現により,ぶどう膜炎の原因疾患の割合に変化が生じていた.(日眼会誌119:678-685,2015)

キーワード
ぶどう膜炎, マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応, Behçet病, ヘルペスウイルス, 眼内リンパ腫
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