背 景:感染性眼内炎の合併症として,視神経を経由しての頭蓋内進展はまれではあるが重篤である.
症 例:79歳女性が右眼瞼腫脹と充血,多量の眼脂を呈して紹介され入院した.白内障のため眼底は不透見であったが,前房内に膿がみられ,computed tomography(CT)での眼窩蜂巣炎と鼻側眼球強膜破裂所見から原因不明の右眼内炎が疑われた.全身精査の結果,肝膿瘍が発見され,経皮経肝ドレナージにてKlebsiella pneumoniaeが検出され,眼脂培養の結果と一致した.Magnetic resonance imaging(MRI)拡散強調画像にて右視神経炎と脳室炎の所見がみられたため,視神経経由の化膿性脳室炎の診断のもと,右眼の眼球摘出が施行され,視神経断端両側からKlebsiella pneumoniaeが検出された.集中的な抗菌治療にもかかわらず,入院46日目に急性呼吸窮迫症候群を発症し永眠された.
結 論:重度な細菌性眼内炎は,視神経を経由して頭蓋内へ感染が波及する場合がある.(日眼会誌119:686-692,2015)