涙腺は涙液を分泌することにより,眼表面環境の恒常性を維持し,健常な眼表面を保護する役割を担っている.涙腺の機能不全による涙液減少はドライアイの原因となる.ドライアイは,最も身近な眼疾患の一つであり,角膜上皮障害を生じることにより,著明な視力低下や生活の質の低下を引き起こす.本研究では,眼窩外涙腺を外科的に欠損させることで,涙液減少を原因とする角膜上皮障害を引き起こすドライアイモデルマウスに,人為的に作製した再生涙腺原基,再生Harder腺原基を移植した.移植された再生涙腺原基,および再生Harder腺原基は,生体内で発生,成長することが可能であり,神経機能と連携した涙液分泌や眼表面保護といった涙腺の生理的機能を十分に果たすことが可能であった.本研究成果は,器官再生による機能的涙腺再生の実現可能性を実証した.(日眼会誌119:799-806,2015)