論文抄録

第119巻第12号

症例報告

認知症を伴う高齢者の重症眼感染症
宮村 有佳1)2), 外園 千恵1), 東原 尚代1)3), 星 最智4), 木下 茂1)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)綾部市立病院眼科
3)ひがしはら内科眼科クリニック
4)国立長寿医療研究センター眼科

目 的:認知症を伴った高齢者の重症眼感染症3例の治療経験を報告する.
症例1:75歳男性.家人が充血に気づき近医を受診.右眼に角膜穿孔を伴う潰瘍があり,家人による抗菌薬点眼を開始した.眼脂より3種の細菌を検出,用いた抗菌薬への感受性は良好であり1か月後に治癒した.
症例2:97歳男性.施設職員が眼脂,充血に気づき近医を受診,右眼に前房蓄膿と角膜潰瘍を認めた.職員による抗菌薬の点眼と内服により,2週後に治癒した.
症例3:80歳女性.左眼角膜の遷延性上皮欠損のため近医より紹介.前房炎症と硝子体混濁を認め,眼内炎が疑われた.家人の協力を得て,抗菌薬の全身投与,局所投与を施行し,3週後に治癒した.3例ともに認知症により診察が難しく,自己点眼などの治療は困難であった.
結 論:認知症を伴う高齢の患者は,周囲による眼異常の早期発見と周囲の治療への協力が重要である.(日眼会誌119:863-867,2015)

キーワード
高齢化, 認知症, 重症眼感染症
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