目 的:認知症を伴った高齢者の重症眼感染症3例の治療経験を報告する.
症例1:75歳男性.家人が充血に気づき近医を受診.右眼に角膜穿孔を伴う潰瘍があり,家人による抗菌薬点眼を開始した.眼脂より3種の細菌を検出,用いた抗菌薬への感受性は良好であり1か月後に治癒した.
症例2:97歳男性.施設職員が眼脂,充血に気づき近医を受診,右眼に前房蓄膿と角膜潰瘍を認めた.職員による抗菌薬の点眼と内服により,2週後に治癒した.
症例3:80歳女性.左眼角膜の遷延性上皮欠損のため近医より紹介.前房炎症と硝子体混濁を認め,眼内炎が疑われた.家人の協力を得て,抗菌薬の全身投与,局所投与を施行し,3週後に治癒した.3例ともに認知症により診察が難しく,自己点眼などの治療は困難であった.
結 論:認知症を伴う高齢の患者は,周囲による眼異常の早期発見と周囲の治療への協力が重要である.(日眼会誌119:863-867,2015)