論文抄録

第119巻第2号

臨床研究

Fisher症候群19例の臨床解析
大野 新一郎1), 三村 治2), 江内田 寛1)
1)佐賀大学医学部眼科学教室
2)兵庫医科大学眼科学教室

目 的:Fisher症候群(FS)の臨床症状について検討する.
対象と方法:FSと診断した19例を後ろ向きに解析した.
結 果:症例は19例で,男性13例,女性6例である.発症平均年齢は42.0歳であった.外眼筋麻痺は外転神経麻痺16例,全外眼筋麻痺2例,外転神経麻痺+上転障害1例であった.外転神経麻痺は全例両側性であったが,外転神経麻痺の程度に左右差があった症例は5例であった.その他の神経症状は眼振5例,眼球運動痛5例,瞳孔障害5例,眼瞼下垂6例,顔面神経麻痺2例,四肢のしびれ·異常感覚9例,運動失調3例,球麻痺1例であった.抗GQ1b抗体陽性率は74%であった.治療は無治療で経過観察を行ったものが16例,ビタミンB12内服治療が1例,免疫グロブリン大量静注療法を行ったものが2例であった.複視は全例で軽快し,複視消失までの期間は平均約70日であった.
結 論:FSはあらゆる年代に発症し男性に多い.また外転神経麻痺が多く,外眼筋麻痺·運動失調·深部腱反射の低下の3徴が揃うことは少なく,3徴以外の神経症状を合併する頻度が高い.複視は無治療でも軽快する予後良好な疾患である.(日眼会誌119:63-67,2015)

キーワード
Fisher症候群, 抗GQ1b抗体, 外転神経麻痺, 外眼筋麻痺, Guillain-Barré症候群
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