本総説では加齢黄斑変性について,我々が行ってきた研究の結果から新たになった知見について述べる.まずは加齢黄斑変性における脈絡膜異常の重要性について検討したところ,ポリープ状脈絡膜血管症では典型加齢黄斑変性と比較すると脈絡膜血管透過性亢進所見を高頻度で認めたが,典型加齢黄斑変性でもポリープ状脈絡膜血管症よりも頻度は少ないものの脈絡膜血管透過性亢進所見を一定の割合に認めた.脈絡膜血管透過性亢進所見を有する加齢黄斑変性症例は広い領域で脈絡膜厚の増加を認め,眼底自発蛍光検査でも高頻度に異常を認めることが分かった.このように,加齢黄斑変性は脈絡膜血管透過性亢進所見を有する加齢黄斑変性と有さない加齢黄斑変性に大別して捉えることで説明される所見も存在する.さらに,加齢黄斑変性の予後因子としての網膜硝子体癒着の重要性について検討した.従来は加齢黄斑変性においては後部硝子体剥離により血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)濃度が低下することが抗VEGF療法の良好な成績につながると考えられて受け入れられつつあったが,今回の検討により後部硝子体剥離は血管新生促進因子であるVEGF以外にも血管新生抑制因子であるinterferon-inducible protein 10(IP-10)の発現などにも影響を及ぼすことが判明した.したがって後部硝子体剥離の関与はこれまでに考えられてきたほど単純ではなく,眼内環境に及ぼす影響は大きく,これまでに想定されていない分子の変化も伴う可能性があり,多様な影響を及ぼすものと結論づけられる.また,最後のパートでは前駆病変の進行メカニズムの基礎的な側面について説明した.我々の行った検討により,加齢によるオートファジー活性の低下が加齢黄斑変性の前駆病変の原因になっている可能性が示唆された.(日眼会誌119: 195-215,2015)