背　景：結膜上皮内新生物（conjunctival intraepithelial neoplasia：CIN）は扁平上皮癌（squamous cell carcinoma：SCC）の前駆病変であり，悪性度は低く進行は遅いが，再発を繰り返すことが多い．今回，免疫抑制状態の患者に発症したCINの2例を報告する．
症例1：60歳女性．全身性エリテマトーデスのため30年間免疫抑制薬を内服中．2005年，血中SCC値高値と両結膜腫瘍を認め，生検で右眼CIN，左眼SCCと診断され，両眼の拡大切除術を施行した．2008年，血中SCC値高値とともに右眼CIN再発を認め，拡大切除術を施行した．その後，死亡するまでの1年間は再発を認めなかった．
症例2：43歳女性．ネフローゼ症候群のため3年間免疫抑制薬を内服中．円錐角膜に対し右眼角膜移植術を2回施行されていた．2011年，血中SCC値の上昇と結膜腫瘍を認め，生検で右眼CINと診断され，拡大切除術を施行した．
結　論：免疫抑制状態の患者におけるCINに対しては血中SCC値測定が治療効果判定や再発の指標になる可能性が示唆された．（日眼会誌119：259-265，2015）