論文抄録

第119巻第4号

症例報告

画像所見よりacute syphilitic posterior placoid chorioretinitisを疑い駆梅療法が奏効した1例
関根 裕美1), 八代 成子1), 大平 文1), 芳田 奈津代1), 森永 将弘2), 永島 ななこ1), 片井 直達1)
1)国立国際医療研究センター眼科
2)東京女子医科大学眼科学教室

背 景:Acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis(ASPPC)は眼梅毒のまれな病型の一つである.今回,片眼の黄斑部を中心とした病変がみられ,画像所見よりASPPCを疑い駆梅療法が奏効した症例を経験したので報告する.
症 例:45歳男性,ヒト免疫不全ウイルス陽性.2週間来の右視力低下を主訴に来院した.
所 見:右眼底に黄斑部を中心とした円板状の黄色の色調変化がみられた.スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain optical coherence tomography:SD-OCT)では,黄斑部に視細胞内節エリプソイド(photoreceptor inner segment ellipsoid:ellipsoid zone)と外境界膜の消失,散在する網膜色素上皮から外顆粒層へ突出した結節性病変がみられた.インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocyanine green fundus angiography:IA)後期では,中心窩を取り囲むドーナツ状の過蛍光領域と,その中に散在する顆粒状の低蛍光が描出された.血清学的検査・画像所見よりASPPCと診断し,ペニシリンGカリウム経静脈投与を行ったところ,視力は(0.2)から(1.2)まで改善し,眼底所見は正常化した.OCTにおいても,ellipsoid zoneは修復され,網膜外層の構造は完全に正常化した.
結 論:本症例は,SD-OCTでASPPCの過去の報告と一致した特徴的な網膜色素上皮の結節性小隆起を認め,IAでは結節に一致した低蛍光像を認めた.(日眼会誌119:266-272,2015)

キーワード
梅毒, Acute syphilitic posterior placoid chorioretinitis, 光干渉断層計, インドシアニングリーン蛍光眼底造影
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