論文抄録

第119巻第9号

臨床研究

50歳以上の高齢者にみられた加齢による斜視の長期観察
大平 明彦1)2)
1)若葉眼科病院
2)東京女子医科大学眼科学教室

目 的:加齢による斜視を長期観察し,その特徴を明らかにする.
方 法:50歳以降に複視を主訴に受診し,2年以上手術をせずに経過を追いかけることのできた加齢による斜視患者の所見を2施設で集めた.
結 果:近見外斜視(輻湊不全,近見斜視角11.3度)が1名,遠見内斜視(開散不全,遠見斜視角は平均5.8度)が8名,上下斜視(遠見斜視角は平均3.6度)が15名であった.14名の患者では,複視を自覚してから2施設を受診するまでに1年以上経過していた.斜視角はゆっくりと(平均0.3度/年;Wilcoxonの符号付順位和検定p<0.01)増大した.17名がプリズム眼鏡を継続装用した.多数例において,複視は初期には間欠性だが頻度は漸次増えた.上下斜視では下転眼が外方回旋斜視を伴うことが比較的多かった.
結 論:加齢による斜視は,緩徐な発症と非常にゆっくりとした進行性,プリズム眼鏡の有用性が特徴である.(日眼会誌119:619-624,2015)

キーワード
加齢による斜視, 斜位の代償不全, 開散不全, 上下斜視, 適応
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