論文抄録

第120巻第1号

臨床研究

真菌性角膜炎に関する多施設共同前向き観察研究―真菌の同定と薬剤感受性検査について―
砂田 淳子1), 浅利 誠志1), 井上 幸次2), 大橋 裕一3), 鈴木 崇3), 下村 嘉一4), 福田 昌彦4), 外園 千恵5), 秦野 寛6), 江口 洋7), 佐々木 香る8), 星 最智9), 矢口 貴志10), 槇村 浩一11), 横倉 俊二12), 望月 清文13), 門田 遊14), 子島 良平15); 真菌性角膜炎多施設スタディグループ
1)大阪大学医学部附属病院臨床検査部
2)鳥取大学医学部視覚病態学
3)愛媛大学大学院医学系研究科眼科
4)近畿大学医学部眼科学
5)京都府立医科大学眼科
6)ルミネはたの眼科
7)徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部眼科学
8)出田眼科病院
9)藤枝市立総合病院眼科
10)千葉大学真菌医学研究センター
11)帝京大学医真菌研究センター
12)東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座眼科学分野
13)岐阜大学大学院医学系研究科眼科学教室
14)久留米大学医学部眼科学講座
15)宮田眼科病院

目 的:我が国における真菌性角膜炎の起因菌と薬剤感受性を把握する.
対象と方法:2011年11月から2年間に参加27施設を受診した真菌性角膜炎患者より分離した真菌に対し,菌属名・菌種名の同定および抗真菌薬8剤(ミカファンギン,アムホテリシンB,フルシトシン,フルコナゾール,イトラコナゾール,ボリコナゾール,ミコナゾール,ピマリシン)の薬剤感受性検査を行った.
結 果:真菌の発育を認めたのは72検体/142検体(50.7%)であった.主要な分離菌はFusarium属(18株),Candida parapsilosis(12株),C. albicans(11株),Alternaria属(6株)であり,それらを含め,遺伝子解析にて31種の多様な真菌が同定された.酵母様真菌の感受性率はボリコナゾール,ピマリシン,フルシトシン,ミカファンギン,アムホテリシンB,フルコナゾールで80%以上であった.糸状菌ではピマリシンの90%を除き他の薬剤は50%以下であった.
結 論:真菌性角膜炎の起因菌は多種多様であるが,本スタディで得られた薬剤感受性結果は,主要起因菌であるFusarium属,C. albicansC. parapsilosisそして他の菌群においてそれぞれ異なる感受性パターンを示しているため,薬剤選択の一つのエビデンスとして今後の真菌性角膜炎治療に有用であると考える.(日眼会誌120:17-27,2016)

キーワード
真菌性角膜炎, 酵母様真菌, 糸状菌, 多施設スタディ, 抗真菌薬薬剤感受性検査
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〒683-8504 米子市西町36-1 鳥取大学医学部視覚病態学 井上 幸次
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