論文抄録

第120巻第10号

臨床研究

緑内障治療のアドヒアランスを妨げる原因の変化:12か月間のクラスター解析を用いた検討
小林 博
国立病院機構関門医療センター眼科

目 的:緑内障患者に1年間にわたり,治療の重要性を繰り返し説明し,指導することによる点眼治療のアドヒアランスを妨げる原因の変化を系統的に調査する.
方 法:対象は,6か月以上緑内障点眼治療を施行させている患者230名(平均値±標準偏差:68.1±13.9歳,男性98名,女性132名)である.調査開始時と12か月後に,アドヒアランスを妨げる原因を面接調査し,それらの原因を列挙しクラスター解析を用いてその変化を検討した.
結 果:12か月間の調査を203名(88.3%)が完了した.アドヒアランス不良患者は調査開始時では69名であった.そのうちの25名が12か月後には良好に改善したが,調査開始時には良好であった患者のうち16名が不良になり,合わせて60名になった(p=0.3).アドヒアランスを障害する原因の総数は115件(0.6±0.9件/人)から79件(0.4±0.7件/人)に有意に減少した(p=0.0128).薬剤の問題が14件から5件に(p=0.0345),患者の問題が70件から50件に(p=0.1),医師の問題が10件から6件に(p=0.3)減少した.環境の問題では,調査開始時に21件であり,そのうちの13件が12か月後にはなくなったが,新たに10件が生じ,合わせて18件になった(p=0.6).
結 語:緑内障の治療の必要性を説明することで,アドヒアランスを障害する原因が有意に減少した.アドヒアランスを不良にする原因は多様であるため,個別にアドヒアランスを改善する方法を講じる必要がある.(日眼会誌 120:673-681,2016)

キーワード
緑内障治療, アドヒアランス, クラスター解析
別刷請求先
〒752-8510 下関市長府外浦町1-1 国立病院機構関門医療センター眼科 小林 博
kobi@earth.ocn.ne.jp