論文抄録

第120巻第10号

臨床研究

眼部定位的放射線治療後血管新生緑内障の危険因子および汎網膜光凝固術の予防効果
上田 瑛美1), 吉川 洋1), 荒川 聡1), 向野 利一郎1), 大賀 才路2), 中村 和正2), 石橋 達朗1), 園田 康平1)
1)九州大学大学院医学研究院眼科学分野
2)九州大学大学院医学研究院臨床放射線科分野

目 的:眼部定位的放射線治療後血管新生緑内障(NVG)の危険因子および汎網膜光凝固術(PRP)の予防効果を検討する.
対象と方法:脈絡膜悪性黒色腫,涙腺癌などの眼部悪性腫瘍に対しガンマナイフ治療,サイバーナイフ治療などの定位的放射線治療を行った24例を対象とし,診療録を後ろ向きに調査した.予防的PRPを行っていない9例をA群,PRPを行った15例をB群とした.A・B両群のNVG発生率をKaplan-Meier法を用い,log-rank testで比較した.
結 果:A群では3例でNVGを発生,B群ではNVG発生はなかった.A群において乳頭部線量がNVGの有意な危険因子であった(p=0.045).B群ではA群に比べ有意にNVG発生率が低かった(p=0.019).
結 論:眼部定位的放射線治療では乳頭部線量がNVGの危険因子となる.PRPはNVGを予防する効果がある.(日眼会誌120:689-695,2016)

キーワード
ぶどう膜悪性黒色腫, 定位的放射線治療, 血管新生緑内障, 汎網膜光凝固術, 血管内皮増殖因子
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〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学大学院医学研究院眼科学分野 上田 瑛美