論文抄録

第120巻第11号

平成27年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説

加齢黄斑変性の新規治療ターゲットとしてのヒスタミンH4受容体
兼子 裕規
名古屋大学大学院医学系研究科眼科学教室

ヒスタミンH4受容体(HRH4)は,H1受容体(HRH1)やH2受容体(HRH2)など一般的に広く認知されているヒスタミン受容体の一つである.HRH4はHRH1やHRH2と異なる特徴を多く有し,炎症反応に深く関与し,神経細胞や血管内皮細胞に発現していると報告されている.今回我々はHRH4が加齢黄斑変性(AMD)の脈絡膜新生血管(CNV)に発現しているか検討し,さらにHRH4を抑制することでCNVを抑制し,AMDの治療ターゲットとして有効であるか検討した.HRH4はヒトおよびマウスCNVで発現しており,Hrh4遺伝子欠損マウスのレーザー誘発CNV(laser-CNV)が野生型に比べて有意に小さいことが確認された.正常状態ではマウス後眼部組織にHRH4は発現していないが,laser-CNVを作製するとHRH4の発現が確認された.HRH4受容体拮抗薬を硝子体内投与することでlaser-CNVが縮小することが確認され,さらにHRH4受容体拮抗薬を内服投与したマウスでもlaser-CNVが縮小することが確認された.HRH4受容体拮抗薬の網膜毒性を検討したところ,HRH4受容体拮抗薬を大量に眼内投与しても網膜変性は確認されず,網膜電図のa波,b波は減弱しなかった.これらのことからHRH4受容体拮抗薬の投与によって,網膜毒性を生じることなくCNVを縮小させることが可能であると考えられた.(日眼会誌120:747-753,2016)

キーワード
加齢黄斑変性, 脈絡膜新生血管, ヒスタミンH4受容体
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