論文抄録

第120巻第11号

平成27年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説

広帯域モード・ロックレーザー光源光干渉断層計を用いた篩状板傾斜角測定と緑内障・近視の関連
庄司 拓平
埼玉医科大学眼科学教室

視神経乳頭篩状板は乳頭深部に位置し,緑内障の発症および進行に重要な働きをしていると考えられている.波長可変モードロック(mode-locked:ML)チタン:サファイアレーザーを光源に用いた広帯域光干渉断層計(OCT)(ML-OCT)は市販機OCTと比べ広い波長幅を得ることができるため,高解像度化を可能にする.本研究ではML-OCTを用いて視神経乳頭の三次元情報を取得し,Bruch膜開口部(BMO)と篩状板前面との位置関係を検討した.近視の進行とともに,乳頭縁の基準であるBMOに対する篩状板の軸方向への傾斜は大きくなり,また,緑内障眼では非緑内障眼に比べて篩状板の軸方向への傾斜が有意に大きいことが示された.さらに,水平方向傾斜角度は等価球面度数と,垂直方向傾斜角度は緑内障の罹患と有意に関連することが認められた.以上の観察から緑内障・近視ともに篩状板はBMOに対して傾斜するが,その主要な傾斜方向はそれぞれで異なることが示された.(日眼会誌120:764-771,2016)

キーワード
光干渉断層計, 篩状板, 緑内障, 近視, Bruch膜開口部
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