緑内障は我が国最大の失明原因であり,眼圧下降以外の治療法が期待されている.我々は正常眼圧緑内障モデルマウスにおいて,アンジオテンシンII 1型受容体(AT1-R)およびToll-like receptor 4の発現が,主に網膜神経節細胞(RGC)とMüllerグリアで上昇することを見出した.これらの発現上昇は,降圧薬として使用されているAT1-R拮抗薬の経口投与により低下し,主にMüllerグリアにおける誘導型一酸化窒素合成酵素の発現上昇も有意に抑制された.AT1-R拮抗薬投与群ではRGC死が有意に抑制されたが,観察期間を通して眼圧の有意な変動は認めなかった.以上からレニン・アンジオテンシン系は神経およびグリア細胞における自然免疫機構の制御に関与しており,AT1-R拮抗薬は眼圧非依存性のメカニズムを介した神経保護効果を持つ可能性が示された.(日眼会誌120:772-782,2016)