論文抄録

第120巻第11号

症例報告

眼周囲毛母腫:診断に苦慮した1例
奥山 由美1), 葛西 梢1)2), 島﨑 潤1)
1)東京歯科大学市川総合病院眼科
2)東京慈恵会医科大学附属病院眼科学教室

背 景:毛母腫は毛根基質から発生する良性腫瘤である.これまで眼瞼に発生する毛母腫は報告されているが,結膜下に位置した毛母腫の症例報告はない.
症 例:32歳女性.左眼球結膜充血,異物感を自覚し,近医にてアレルギー性結膜炎の診断で点眼加療を開始されたが改善がみられなかったため当院受診となった.左眼球結膜耳側に限局した充血,左外眼角付近の眼瞼結膜下に直径5 mm程度の硬結塊を認めた.異物による炎症反応と考え除去を行った.方法は,結膜を切開し剪刀で腫瘤を剝離しながら摘出した.
所 見:腫瘤は周囲への癒着はなく,5 mm×10 mm大の毛髪を含む白色硬結塊であった.病理所見では毛包を含む無細胞成分からなり,陰影細胞(shadow cells)および好塩基性細胞(basophilic cells)を認め,毛母腫と診断した.
結 論:毛母腫は毛根基質から発生する良性腫瘍であるが,外眼角部から連続している毛母腫は毛根組織のない結膜下にも発生しうる.(日眼会誌120:791-796,2016)

キーワード
毛母腫, 眼科, 結膜下腫瘍, 陰影細胞, 幻影細胞
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