背 景:角膜浮腫による実質混濁で透明性を消失した角膜において,近赤外光光学系が角膜実質浮腫眼の眼内観察を可能にするといわれている.
目 的:浮腫状角膜眼における眼内観察を行い,虹彩形状の確認を行うこと.
対象と方法:水疱性角膜症,または角膜移植片不全を来した11例11眼.男性6例6眼,女性5例5眼,平均年齢は72.7±13.0歳(平均値±標準偏差)であった.近赤外光カメラの可視光モードと近赤外光モードを用いて,角膜実質浮腫眼の前眼部写真撮影を行った.得られた画像から,瞳孔形状,虹彩紋理,虹彩切除痕の有無を判定した.
結 果:可視光を用いた観察では,11例11眼で,瞳孔形状,虹彩切除痕の有無,虹彩紋理がいずれも評価困難と判定された.近赤外光を用いた観察では,11例11眼で瞳孔形状の確認が可能と判定された.9例9眼で虹彩切除痕の有無を確認できると判定された.虹彩形状評価不能と判定されたのは2例2眼であった.虹彩紋理は3例3眼で確認可能と判定された.
結 論:角膜実質浮腫眼における近赤外光光学系を用いた虹彩形状の評価は有用であった.(日眼会誌120:110-113,2016)