背 景:高安動脈炎(大動脈炎症候群)に生じるまれな眼合併症である角膜炎を経験したので,その臨床経過とともにレーザー共焦点顕微鏡によって観察された角膜所見を報告する.
症 例:47歳,女性.高安動脈炎の発症時に,両眼の霧視が出現したため,紹介受診となった.細隙灯顕微鏡検査にて,両眼の充血と角膜実質内に多発性の浸潤巣を認めたため,角膜炎と診断した.また,レーザー共焦点顕微鏡検査にて,両眼の角膜実質内に多数の細胞浸潤および活性化された角膜実質細胞(ケラトサイト)が観察された.副腎皮質ステロイド薬の内服と点眼治療により角膜炎は改善し,レーザー共焦点顕微鏡検査では,両眼の角膜実質内に細胞浸潤を認めなくなった.軽度の角膜混濁を残すものの,現在に至るまで再発を認めていない.
結 論:高安動脈炎のまれな眼合併症として角膜炎を生じることがあり,その臨床経過およびレーザー共焦点顕微鏡検査により何らかの免疫異常が示唆された.(日眼会誌120:114-119,2016)