論文抄録

第120巻第4号

症例報告

白内障手術後10か月目に明らかになった前房内異物の1例
方波見 有貴, 坂田 礼, 本庄 恵, 沼賀 二郎
東京都健康長寿医療センター眼科

目的:10か月目に発見された白内障手術後の前房内眼軟膏の報告.
症例:74歳男性.右眼の白内障に対して,耳側角膜切開法にて水晶体超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を合併症なく施行した.視力も回復し,術後の経過は良好であった.
所見:術後10か月目に霧視の自覚症状が出現,眼内レンズ上に直径1 mm程度の油滴様円形異物を認めた.視力低下はなく,眼圧は正常範囲内,角膜は清明で前房内炎症は認めなかった.自覚症状の軽快がなかったため,前房内の異物除去術を施行し,異物は一塊となって眼外へ取り出すことができた.しかし検体操作上の問題から,定性検査を行うことはできなかった.
結論:白内障手術施行後10か月目に,前眼部の炎症や眼圧上昇を合併しない前房内異物を認めた症例を経験した.術終了時に使用したオフロキサシン眼軟膏が前房内に侵入し,無症状のまま潜んでいた可能性が高いと考えられた.(日眼会誌120:310-315,2016)

キーワード
角膜切開白内障手術, 前房内異物, 眼軟膏
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