論文抄録

第120巻第7号

臨床研究

角膜内皮障害眼に対して施行した白内障手術症例の検討
中谷 智, 河野 博之, 村上 晶
順天堂大学医学部眼科学教室

目 的:角膜内皮障害眼への白内障手術症例の検討.
対象と方法:2009年1月から2013年12月までに順天堂医院において,角膜内皮障害重症度分類Grade 2および3(内皮細胞密度1,000 cells/mm2未満)の症例に対して白内障手術を術中合併症なく施行し,術後1年以上経過を追えた20人29眼,男性8人,女性12人を対象とした.患者背景,視力,内皮細胞密度,水疱性角膜症発症の有無を後ろ向きに検討し,角膜内皮障害Grade 2群と3群の比較検討も行った.
結 果:術後1年平均視力0.43,平均内皮細胞密度減少率は13.9±14.5(平均値±標準偏差)%であり,5眼(17.2%)は術後平均3.0±3.7か月(直後~9か月)に水疱性角膜症を発症した.Grade 3群は2群と比較して有意に水疱性角膜症を発症しやすく,水晶体核硬化も進行していた.
結 論:重症角膜内皮障害を伴う白内障症例では水晶体核硬化も進行している場合が多く,水疱性角膜症は比較的術後早期に発症した.手術施行には適正な時期があり,遅くなり過ぎないように注意が必要である.(日眼会誌120:481-486,2016)

キーワード
角膜内皮障害, 角膜内皮障害重症度分類, 水疱性角膜症, 白内障手術
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