論文抄録

第121巻第1号

臨床研究

日長因子が乳児期の屈折の発達に及ぼした影響の痕跡:重回帰分析による白内障患者の屈折要素の検討
枩田 亨二1), 横山 連2), 森田 健3), 白木 邦彦4)
1)まつだ眼科
2)大阪市立総合医療センター小児医療センター小児眼科
3)福岡女子大学国際文理学部環境科学科
4)大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学

目 的:屈折と生まれ月の関係は乳児期における日長因子の屈折への影響を示唆する.高齢者の屈折要素にこの痕跡を求め,日長因子による影響を検証する.
方 法:眼内レンズ度数決定の目的で角膜曲率半径,眼軸長,屈折を測定した男性740例,女性882例,合計1,622例の白内障患者を検討した.各症例が出生後1~11か月期に曝露された日長をそれぞれ変数DL1~DL11,日長の偏差をDDL1~DDL11とした.目的変数を角膜曲率半径,眼軸長,あるいは屈折とし,説明変数をDL1~DL11あるいはDDL1~DDL11として重回帰分析を行った.
結 果:DLは角膜曲率半径,眼軸長,屈折のいずれの説明変数ともいえなかった.これに対し,DDLは角膜曲率半径の有意の説明変数であった(p<0.05).そしてDDLは屈折とは関係が弱く,眼軸長とは関係が認められなかった.
結 論:乳児期の屈折の発達は日長そのものではなく日長偏差の影響を受けており,その影響の痕跡は高齢者にも認められる.(日眼会誌121:17-22,2017)

キーワード
屈折, 角膜曲率半径, 日長, 光環境, 乳児期
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〒590-0503 泉南市新家2965 まつだ眼科 枩田 亨二
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