線維柱帯切除術は一般的な緑内障濾過手術である.創傷治癒機転による術後の濾過胞の構造変化は濾過機能に影響するため,術後管理において濾過胞形態の把握は非常に重要となる.近年,前眼部光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の進歩により,濾過胞の構造に関する多くの情報が得られるようになった.特に三次元前眼部OCTを用いることで,濾過胞を連続的に観察することまで可能となった.まず我々は,症例検討において,三次元前眼部OCT画像が実際の構造と対応していることを確認した.この結果を踏まえて,規定した6つの濾過胞パラメータの線維柱帯切除術後の経時的変化を評価し,各濾過胞パラメータと術後眼圧および房水内サイトカイン濃度の相関を解析する前向き研究を行った.その結果,術後2週の時点での房水流出路開口部の幅が術後12か月の眼圧に有意に相関することが示された.また房水内monocyte chemoattractant protein-1濃度と房水流出路開口部の幅に有意な相関を認めた.以上より,三次元前眼部OCTは濾過胞内部構造をとらえる有用な画像検査機器であり,さらに房水内サイトカインが影響する房水流出路開口部の構造変化が線維柱帯切除術予後に関与する可能性が示唆された.(日眼会誌121:829-836,2017)