網膜色素変性(retinitis pigmentosa:RP)における慢性炎症は,これまで主に網膜変性に付随する生体反応として捉えられてきたが,近年の研究から網膜変性の病態に積極的に関与することが明らかとなってきている.我々はRP患者の眼内炎症をフレア・セルフォトメータで評価し,健常者と比較して前房内フレア値が上昇していること,前房内フレア値と中心視機能が負の相関を示すことを明らかとした.さらにRPモデル動物での実験においても,網膜変性のごく早期から炎症性サイトカインの上昇や炎症細胞の浸潤がみられること,炎症細胞の活性化を抑制することで網膜変性が著明に抑制されることから,RPの慢性炎症は視細胞死を促進すると考えられる.本稿では近年の我々の研究成果を中心に,RPの病態への慢性炎症の関わりとその分子機構について概説する.(日眼会誌121:857-863,2017)