論文抄録

第121巻第12号

症例報告

両眼網膜中心静脈閉塞症の所見を示した原発性マクログロブリン血症による過粘稠症候群の1例
秋山 英雄1), 石原 美紀江1), 松本 英孝1), 清水 啓明2), 半田 寛2), 戸所 大輔1)
1)群馬大学医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学教室
2)群馬大学医学系研究科生体統御内科学講座血液内科学教室

背 景:両眼の網膜中心静脈閉塞症様の変化を示す場合,過粘稠症候群を疑う必要がある.原発性マクログロブリン血症による両眼の過粘稠症候群に対して血漿交換併用化学療法を行い,光干渉断層計(OCT)で経過を追うことができた症例を報告する.
症 例:57歳,男性.2~3か月前より両眼の視力低下を自覚していた.近医にて右眼網膜中心静脈閉塞症と診断され,当院紹介となった.両眼の網膜静脈血管の拡張と蛇行があり,漿液性網膜剝離と網膜の膨化を伴っていた.鑑別診断として両眼の過粘稠症候群を挙げて当院の血液内科に紹介したところ,原発性マクログロブリン血症の診断に至った.直ちに血漿交換とデキサメタゾン・リツキシマブ・シクロホスファミド(DRC)療法を開始し,両眼の漿液性網膜剝離や網膜膨化は徐々に改善していった.さらに脈絡膜厚も治療に反応して両眼ともに減少した.
結 論:両眼の黄斑浮腫を伴う網膜静脈血管の拡張・蛇行がある症例では,過粘稠症候群を疑う必要がある.M蛋白の減少に比例して,漿液性網膜剝離や脈絡膜厚が減少することが確認できた.(日眼会誌121:923-929,2017)

キーワード
過粘稠症候群, 原発性マクログロブリン血症, 光干渉断層計, 漿液性網膜剝離, 脈絡膜厚
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