目 的:長期にわたる水疱性角膜症(long-standing BK)では輪部機能不全を来す症例が存在する.その原因として上皮細胞の増殖能が亢進している可能性を調べるため,水疱性角膜症(BK)家兎モデルを作製し,角膜上皮の増殖能を解析する.
方 法:ウサギBKモデルは逆Shinskeyフックを用いてcontinuous curvilinear descemetorhexis(CCD)により角膜内皮およびDescemet膜を隔離し作製した.CCD直後から経日的変化を観察し,角膜上皮の増殖能を5-bromo-2'-deoxyuridine(BrdU)パルスチェイス法と組織学的に解析した.
結 果:角膜内皮の剝離直後から角膜実質浮腫が観察され,1週後には正常角膜と比較して約5倍の厚さのBKを作製できた.BrdU陽性率を比較したところ,BKの角膜上皮でBrdU陽性率が減少傾向を示し,Ki67陽性率においてはBKの角膜上皮で増加傾向を観察した.6週後において血管侵入は認められたが,結膜上皮の角膜周辺部への侵入ならびに角膜上皮のテロメアへの影響は認められなかった.
結 論:BKによってその角膜上皮細胞の増殖能が亢進している可能性が示唆された.(日眼会誌121:455-463,2017)