論文抄録

第121巻第7号

臨床研究

日本国内での白内障周術期の消毒法および抗菌薬投与法の現況調査
松浦 一貴1), 宮本 武2), 田中 茂登3), 上松 聖典4), 森 隆史5), 須藤 史子6), 武信 二三枝7), 後藤 憲仁8), 大久保 真司9), 谷戸 正樹10), 柿木 雅志11), 大口 剛司12), 佐伯 有祐13), 井上 幸次7)
1)野島病院眼科
2)和歌山県立医科大学附属病院紀北分院眼科
3)香川県立中央病院眼科
4)長崎大学医学部眼科学教室
5)福島県立医科大学眼科学講座
6)東京女子医科大学眼科学教室
7)鳥取大学医学部視覚病態学
8)獨協医科大学眼科学教室
9)金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学
10)松江赤十字病院眼科
11)滋賀医科大学眼科学講座
12)北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
13)福岡大学医学部眼科学教室

目 的:国内の白内障術後眼内炎予防法の実状を把握する.
方 法:2016年3月に,定期的に白内障手術を行っている12県の術者を対象に眼内炎対策のアンケートを行った.
結 果:825人中544人(66%)より回答を得た.術前消毒は皮膚97%,術野93%にヨード製剤が用いられていた.術中に複数回のヨード製剤使用は34%であった.抗菌薬の術前点眼98%,術後点眼100%であり,その90%はフルオロキノロン系であった.灌流液内投与は19%であり,その78%はイミペネムまたはセフェム系であった.結膜下注射は24%であり,その77%はアミノグリコシド系であった.前房内投与は7%,眼軟膏は78%であり,その大半はフルオロキノロン系であった.のべ症例数は183,432例,術後1か月以内の眼内炎数は21例であり,8,735例に1例(0.01%)であった.前房内投与を行った14,989例では眼内炎は認められなかった.
結 論:術前消毒におけるヨード製剤使用は一般化している.術中ヨード製剤使用も普及しつつある.投与法ごとに特定の系統の抗菌薬が選択されていた.(日眼会誌121:521-528,2017)

キーワード
白内障手術, 眼内炎予防, ポビドンヨード, 日本
別刷請求先
〒682-0863 倉吉市瀬崎町2714-1 野島病院眼科 松浦 一貴
matsu224@ncn-k.net