論文抄録

第121巻第7号

症例報告

虚血型網膜静脈閉塞に対する抗血管内皮増殖因子薬治療後にみられた網膜無灌流域の縮小
村松 大弐1), 野間 英孝2), 三浦 雅博3), 内海 卓也1), 若林 美宏1), 後藤 浩1)
1)東京医科大学眼科学分野
2)東京医科大学八王子医療センター眼科
3)東京医科大学茨城医療センター眼科

背 景:抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療による網膜無灌流域(NPA)縮小の可能性が指摘されているが,症例報告数はいまだに少ない.NPAが縮小した虚血型網膜静脈閉塞の3症例を報告する.
症例1:網膜静脈分枝閉塞に1か月ごとに3回のラニビズマブ(IVR)導入し,NPAの縮小を確認後,残存NPAに網膜光凝固(PC)を施行,その後のNPAは不変であった.
症例2:網膜中心静脈閉塞(CVO)に対しアフリベルセプトを1か月ごとに3回導入し,NPAの縮小を確認後,残存NPAにPCを施行したが4か月後の再検時にはNPAは拡大していた.
症例3:Hemi CVOに対しIVRを1か月ごとに3回施行し,NPA縮小を確認後,残存NPAにPCを施行した.6か月後にNPAは拡大し,16か月目には網膜新生血管を認めたためPCを追加した.
結 論:抗VEGF治療によってNPAの縮小がみられたが,残存NPAにPCを行ってもNPAの再拡大を来す症例もあり,PCの適応や実施の時期については検討の余地がある.(日眼会誌121:546-552,2017)

キーワード
網膜無灌流域, 抗血管内皮増殖因子, 網膜中心静脈閉塞, 網膜静脈分枝閉塞, 網膜光凝固
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〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学眼科学分野 村松 大弐
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