目 的:下直筋鼻側移動術の回旋矯正効果に影響を与える因子について検討する.
対象および方法:2011年から2016年までの間に兵庫医科大学病院眼科を受診し回旋斜視と診断され,下直筋鼻側移動術1筋腹を施行された84例(平均年齢61.4歳)を対象とした.回旋偏位の測定には大型弱視鏡を用い,術前と術後1か月の測定値の差を手術効果とした.回旋矯正効果に影響を与える因子として年齢,回旋斜視の原因,術前の上下・水平偏位の3因子につき後ろ向きに検討した.
結 果:全症例の平均回旋矯正効果は5.9度で,年齢による回旋矯正効果に有意差を認めなかった(p=0.7131).回旋斜視の原因と手術効果にも相関を認めず(p=0.4510),術前の上下・水平偏位量も手術効果と相関を認めなかった(上下p=0.6088,外斜視p=0.9222,内斜視p=0.9806).
結 論:下直筋鼻側移動術の回旋矯正効果は年齢,斜視の原因,術前の上下・水平偏位に関係なく安定していた.(日眼会誌121:707-711,2017)