目 的:白内障術後の複視が斜視を原因としていた症例の特徴と治療成績について検討する.
対象および方法:2011年8月から2016年7月までの間に,白内障術後に生じた複視を主訴に兵庫医科大学病院眼科を受診し,斜視と診断され斜視手術を施行された17例(平均年齢72.6歳,範囲60~82歳)を対象とした.複視の種類および斜視の特徴と斜視手術の成績について検討した.
結 果:複視の種類は,回旋複視が15例(88.2%),交差性複視が1例(5.9%),上下複視が1例(5.9%)で,斜視の種類は,滑車神経麻痺が12例,外斜視が1例(5.9%),甲状腺眼症が1例(5.9%),原因不明が3例(17.6%)で,滑車神経麻痺が7割を占めた.斜視手術は,回旋複視に対しては,15例中14例(93.3%)に下直筋鼻側移動術(単独3例,後転術の併用11例)を施行し,残りの1例(6.7%)は水平筋上下移動術を施行した.外斜視の1例には内外直筋前後転術が,甲状腺眼症の1例には上直筋後転術が用いられた.複視消失率は,遠見では全例(100%)で消失したが,近見では2例(11.8%)で複視が残存し,プリズム眼鏡を要した.
結 論:白内障術後の複視の要因に,回旋斜視がある.回旋斜視は外観上目立たないことから,白内障術前の検出がしばしば困難であるため,術者はその可能性を知っておくべきであると考えられた.(日眼会誌122:753-757,2018)