論文抄録

第122巻第10号

症例報告

急性帯状潜在性網膜外層症の病勢判定に,微小視野計(MP-3)の所見が有用であった1例
東 岳志, 石田 友香, 大野 京子
東京医科歯科大学眼科学教室

目 的:急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)の副腎皮質ステロイド加療中の病勢判定に微小視野計(MP-3,ニデック社)が有用であった1症例を経験したので報告する.
症 例:20歳女性.左眼の急性な視力低下と視野のちらつきを主訴に当院を受診した.左眼の矯正視力は(0.06)まで低下し,Goldmann動的視野検査(GP)での中心暗点,光干渉断層計(OCT)でのびまん性のellipsoid zoneの障害,多局所網膜電図の波形の減弱などから,AZOORの診断とした.ステロイドパルス治療を1クール施行後,GPでは中心暗点が拡大したが,自覚症状は改善の訴えがあり,MP-3を施行したところ網膜視感度に改善を認めた.また,その後の網膜視感度の改善の程度から,副腎皮質ステロイドの内服治療に比べてパルス治療のほうが有効と判断し,計3回のステロイドパルス治療を行った.初診3か月後には矯正視力は(1.2)まで改善し,中心暗点も消失した.
結 論:MP-3は中心暗点のあるような固視不良な症例でも精密な視野評価が可能で,経時的な測定によりAZOORの病勢評価と治療方針の決定に有用であった.(日眼会誌122:772-778,2018)

キーワード
急性帯状潜在性網膜外層症, 微小視野計, MP-3, ステロイドパルス治療
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