論文抄録

第122巻第11号

受賞論文総説

平成29年度日本眼科学会学術奨励賞
緑内障における光干渉断層計を用いた篩状板評価方法の確立
面高 宗子
東北大学大学院医学系研究科眼科学分野

緑内障は視神経と視野に特徴的変化を有する眼疾患である.光干渉断層計(OCT)は非侵襲的に,緑内障性の構造変化を再現性高く客観的に定量化することが可能である.篩状板は緑内障における網膜神経節細胞軸索障害の場であるが,これまで生体眼での篩状板測定は難しかった.最近,OCT撮影方法の工夫や高深達性レーザー波長の選択などにより,篩状板前面の可視化が可能となり,篩状板の変形や欠損などが緑内障では多く観察されることが報告された.その一方で,篩状板の後面を適切に確認することは困難で,篩状板の厚みを測定することに課題があった.本研究では,視神経乳頭を中心に撮影したボリュームデータから再構築した三次元データを用いて篩状板に水平および垂直な断面を切り出し,篩状板の孔構造が認識できる部位を篩状板後面として,篩状板厚を測定できるソフトウェアを開発した.その結果,篩状板は前視野緑内障の病期ですでに菲薄化しており,篩状板厚が視野異常や軸索障害の程度と高い相関を有することが判明した.そのメカニズムを解明するために,短時間で篩状板厚を測定可能な簡易版篩状板厚測定ソフトウェアを開発し検討したところ,篩状板厚は緑内障重症度だけでなく,乳頭陥凹の大きさや視神経乳頭の組織血流とよく相関することが証明された.OCTによる篩状板厚の他覚的評価は,緑内障の早期診断や病態解明,進行予測などに応用されることが期待される.(日眼会誌122:825-831,2018)

キーワード
緑内障, 光干渉断層計, 篩状板厚, 眼循環
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