再生医療の研究が進む中,特定の細胞を適切に誘導する技術が必要となってきているが,角膜上皮細胞の分化がどのように規定されているかは未だ不明であった.本研究ではiPS干渉法という新しいスクリーニング法を用いて,OVOL2を含む6つの転写因子セットが,ヒト角膜上皮分化を決定しているキーとなる因子であることを見出した.この転写因子セットをヒト皮膚線維芽細胞に導入することで,10日間でケラチン3およびケラチン12を発現する角膜上皮様細胞が誘導された.また,ヒト角膜上皮細胞においてOVOL2をノックダウンさせると,角膜上皮の重要な機能の一つであるバリア機能が大きく低下した.その維持メカニズムとして,上皮間葉転換を介していた.以上のことは,難治性の角膜疾患に対して,iPS細胞からの分化誘導の高効率化や角膜上皮分化機能維持メカニズムの解明につながると考えている.(日眼会誌122:832-840,2018)