論文抄録

第122巻第11号

症例報告

Laser speckle flowgraphyにより脈絡膜循環動態を観察できた硬膜動静脈瘻の1例
矢田 圭介1), 橋本 りゅう也1), 原田 雅史2), 前野 貴俊1)
1)東邦大学医療センター佐倉病院眼科
2)東邦大学医療センター佐倉病院同脳神経外科

目 的:硬膜動静脈瘻(dAVF)では,静脈うっ滞により,しばしば網膜中心静脈閉塞症(CRVO)および漿液性網膜剝離(SRD)を合併する.dAVFに合併したSRDが短期間で自然寛解した症例において,laser speckle flowgraphy(LSFG)を用いて脈絡膜血流動態を観察できた症例を経験したので報告する.
症 例:症例は90歳女性で左眼視力低下のため当院を受診した.初診時の前眼部所見としては,左眼の充血と眼球突出を認め,またoptical coherence tomography(OCT)では脈絡膜循環のうっ滞と非虚血型CRVOに伴うSRDを認めた.頭部磁気共鳴画像(MRI)検査では左上眼静脈の著明な拡張を呈しており,頭部血管造影検査により海綿静脈洞部dAVFと診断した.左眼黄斑部の相対的血流速度(MBR)は6.2であり,右眼(MBR:17.7)と比較し,著明に低下していた.初診8週後には,初診時と比較し,左眼MBR(11.2)はSRDの改善や臨床所見の改善とともに著明に増加していた.
結 論:dAVFに合併したSRDの病態形成には脈絡膜循環障害が関与している可能性が示唆された.LSFGはdAVFを有する症例において,その病態や経過を非侵襲的かつ定量的に評価するうえで有用であると考える.(日眼会誌122:868-874,2018)

キーワード
硬膜動静脈瘻, 網膜中心静脈閉塞症, 漿液性網膜剝離, 脈絡膜循環, laser speckle flowgraphy
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〒285-8741 佐倉市下志津564-1 東邦大学医療センター佐倉病院眼科 矢田 圭介
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