論文抄録

第122巻第4号

臨床研究

三焦点眼内レンズ(Pod F,Pod FT)の術後成績
中村 邦彦, ビッセン宮島 弘子, 平沢 学, 太田 友香, 大木 伸一, 田中 みちる, 南 慶一郎
東京歯科大学水道橋病院眼科

目 的:国内承認の回折型多焦点眼内レンズ(IOL)は二焦点のため,中間または近方視時に眼鏡を必要とする症例がある.遠中,遠近の回折構造を組み合わせた三焦点IOLの術後成績を後ろ向きに検討する.
対象と方法:対象は,多焦点IOLを希望し,国内承認IOLを含め各IOLの説明後に三焦点IOLを希望した54例54眼である.挿入IOLは,Physiol社製Pod F(以下,F群)とトーリック機能のあるPod FT(以下,T群)で,各群の症例数は25例25眼,29例29眼であった.術後1か月での遠方,中間(70 cm,50 cm),近方(40 cm)裸眼視力,コントラスト感度,眼鏡装用状況,および,T群におけるIOL軸ずれを検討した.
結 果:遠方裸眼視力(logMAR値)はF/T群で-0.04/-0.06,70 cmは0.06/0.04,50 cmは0.09/0.05,近方は0.12/0.07と,両群に有意差はなかった.コントラスト感度は両群とも正常範囲内で,F群の88.0%とT群の全例がまったく眼鏡を使用していなかった.トーリックモデルのIOL軸ずれは,平均値±標準偏差:3.43±2.27°で全例が10°以下であった.
結 論:回折型三焦点IOLは,遠方,中間距離,近方40 cmのすべてで良好な視力が得られ,広い明視域を求める症例に有用と考えられた.(日眼会誌122:281-286,2018)

キーワード
回折型三焦点眼内レンズ, トーリック眼内レンズ, 中間視力, 眼鏡装用
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