論文抄録

第122巻第4号

臨床研究

白内障手術前後の角膜生体力学パラメータと眼圧の変化
三木 篤也1), 前田 直之1)2), 生野 恭司1)3), 浅井 智子1)4), 原 千佳子1), 三田村 勇人5), 西田 幸二1)
1)大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室
2)湖崎眼科
3)いくの眼科
4)あさいクリニック
5)中京病院眼科

目 的:白内障手術による角膜生体力学特性パラメータの変化を検討する.
対象と方法:対象は大阪大学医学部附属病院において白内障手術を受けた患者のうち,白内障以外の眼疾患を持たず,手術前と手術3か月後に信頼度のある検査結果が得られた14例22眼〔年齢73±8歳(平均値±標準偏差).男性4例,女性10例〕である.角膜生体力学特性パラメータの測定は前眼部Scheimpflug解析装置を用いて行った.術前後のパラメータの変化を,まず単変量(対応のあるt検定)で解析し,有意であったパラメータについては,眼圧,眼軸長,前房深度を調整した多変量解析でも検討を行った.
結 果:単変量解析では前眼部Scheimpflug解析装置で測定できる31の生体力学特性パラメータのうち,5つのパラメータが術前後で有意な差を認めた.また,眼圧は手術により有意に下降した(15.1±2.8 vs 12.6±1.9,p=0.0001).多変量解析においては,いずれの生体力学特性パラメータの変化も統計学的に有意ではなかった.5つのうち4つのパラメータが,多変量解析において眼圧と有意に相関した.
結 論:前眼部Scheimpflug解析装置を用いて測定した生体力学特性パラメータの一部が,単変量解析において白内障手術の前後で有意に変化したが,多変量解析では有意ではなかった.眼圧下降の影響による見かけの変化であり,真の生体力学特性の変化は小さいと考えられる.(日眼会誌122:293-299,2018)

キーワード
生体力学特性, 眼圧, 白内障手術, Scheimpflug解析装置
別刷請求先
〒565-0871 吹田市山田丘2-2 大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学) 三木 篤也
amiki@ophthal.med.osaka-u.ac.jp