目 的:網膜生検が診断に有用であった硝子体網膜リンパ腫(VRL)の2症例を経験したので報告する.
症例1:66歳,女性.1年ほど前に中枢神経系原発悪性リンパ腫と診断され,治療でいったん病変は消失していた.その頃より右眼の霧視があったが,徐々に増強してきたため当院を受診した.右眼の網膜下に白色病変を認め,VRLを疑い,硝子体生検を施行した.細胞診は判定不能,インターロイキン(IL)-10/IL-6比の上昇を認めたものの,免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子再構成も判定不能であった.約2か月後に左眼に病変が出現し,光干渉断層計(OCT)で網膜内に病変を認めた.硝子体混濁がないため網膜生検を施行した.網膜内への大型B細胞の浸潤を認めVRLと診断した.
症例2:77歳,女性.左腋窩リンパ節原発のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断され,治療で寛解を維持していた.1年ほど前に左眼の硝子体出血に対し硝子体手術を施行されたが,その後左眼に白色病変が出現し,当院へ紹介となった.OCTで網膜内に病変を認めた.硝子体手術後であり,硝子体生検では診断がつかない可能性が高いため,網膜生検を施行した.網膜内への異型を伴うB細胞の浸潤を認め,VRLと診断した.
結 論:硝子体中に細胞浸潤がない,もしくは硝子体手術歴があり,網膜内病変があるVRLの症例には網膜生検が診断に有用である.(日眼会誌122:312-318,2018)