論文抄録

第122巻第5号

臨床研究

糖尿病患者と非糖尿病患者における角膜所見の症例対照研究
榛村 真智子, 髙野 博子, 木下 望, 豊田 文彦, 田中 克明, 高木 理那, 小林 未奈, 梯 彰弘
自治医科大学附属さいたま医療センター眼科

目 的:糖尿病の眼合併症として糖尿病による角膜障害があり,涙液分泌能の低下や角膜知覚の低下が起こるといわれているが,いまだ不明な点も多い.糖尿病患者と非糖尿病患者における硝子体手術前の角膜検査所見を比較し,術後経過についても検討する.
対象と方法:2014年2月から2016年2月までに硝子体手術を施行した連続575眼のうち,年齢と性別をマッチさせた糖尿病眼,非糖尿病眼各104眼を対象とした.なお緑内障点眼薬使用例,ドライアイ点眼薬使用例,コンタクトレンズ使用例,眼表面に異常所見のある例,フルオレセイン染色陽性例,半年以内に内眼手術歴のある例は除外した.術前の涙液分泌量(Schirmer試験I法),角膜知覚(Cochet-Bonnet法),角膜内皮細胞密度を比較検討した.また,硝子体手術後の遷延性上皮欠損の発症についても検討した.
結 果:糖尿病群では涙液分泌量が少なく(p=0.040),角膜知覚が有意に低下していた(p=0.0018).角膜内皮細胞密度には差がなかった(p=0.12).硝子体手術後の遷延性上皮欠損は糖尿病群の8眼が発症したのに対し,非糖尿病群では0眼であった(p=0.0068).
結 論:糖尿病群では有意に涙液分泌量が少なく,角膜知覚が低下していた.細隙灯顕微鏡で異常所見がなくても,糖尿病患者の眼表面には異常を来していることが示唆された.(日眼会誌122:365-371,2018)

キーワード
糖尿病角膜障害, 角膜知覚, 涙液分泌量, 角膜内皮細胞密度, 遷延性上皮欠損
別刷請求先
〒330-8503 さいたま市大宮区天沼町1-847 治医科大学附属さいたま医療センター眼科 榛村 真智子
machiko@jichi.ac.jp