目 的:強度近視性の内下斜視に対する上外直筋結合術後の斜視残存の原因を検討する.
対象と方法:2011年1月から2014年12月までに京都府立医科大学附属病院およびバプテスト眼科クリニックにおいて片眼の上外直筋結合術を行った強度近視性の内下斜視症例13例26眼を対象とした.上記症例を斜視残存群(術後3~6か月で近見斜視角が10Δより大きい斜視症例)と非斜視残存群とに分け,術前にmagnetic resonance imaging(MRI)で測定した上直筋と外直筋の成す角度(以下,偏位角度)を比較検討した.
結 果:術前における術眼の偏位角度は,斜視残存群と非斜視残存群でそれぞれ平均147.6±16.5°,140.2±34.5°で,有意差を認めなかった.一方,非手術眼の偏位角度は,斜視残存群と非斜視残存群で,それぞれ平均135.7±13.4°,116.4±14.6°で有意差を認めた(p=0.03,t検定).
結 論:非手術眼の術前の偏位角度は,斜視残存群のほうが非斜視残存群よりも大きく,非手術眼は脱臼傾向であった.片眼性の固定内斜視であっても術前のMRIでの偏位角度が両眼とも120°よりも大きい場合には,両眼手術を選択することが望ましい.(日眼会誌122:379-384,2018)