論文抄録

第122巻第5号

症例報告

高齢者にみられた悪性視神経膠腫の1例
玉井 一司
名古屋市立東部医療センター眼科

背 景:高齢者の視神経膠腫はまれであり,その予後は不良である.
症 例:81歳女性が,左眼の視力障害を主訴に受診した.視力は右(0.9),左(0.2)で,左眼に視神経乳頭腫脹がみられた.眼窩部magnetic resonance imaging(MRI)で球後の視神経腫大がみられガドリニウム造影効果を示した.視神経炎を疑いステロイドパルス治療を開始した.左眼視力は一時的に軽快したが,再度増悪し光覚なしとなった.左眼視神経乳頭は次第に萎縮を呈したが,視神経腫大が視交叉に進展し,右眼の視力,視野障害を来した.視神経生検を行い,悪性視神経膠腫(grade IV)の診断を得た.その後,経過観察となったが,発症後1年10か月で両眼が失明し,その11か月後に死亡した.
結 論:まれではあるが,高齢者に悪性視神経膠腫が発症することがある.視神経腫脹が継続して進展する場合は,状況が許せば視神経生検などの検索を行う必要がある.(日眼会誌122:400-405,2018)

キーワード
悪性視神経膠腫, 高齢者, 視神経腫脹, 視神経生検
別刷請求先
〒464-8547 名古屋市千種区若水1-2-23 名古屋市立東部医療センター眼科 玉井 一司
kazutamai33@gmail.com