論文抄録

第122巻第8号

臨床研究

網膜血管増殖性腫瘍の臨床的特徴と予後の検討
川上 摂子, 若林 美宏, 後藤 浩
東京医科大学臨床医学系眼科学分野

目 的:網膜血管増殖性腫瘍の臨床像の特徴と治療に対する予後について検討する.
方 法:1997年1月から2015年8月までに東京医科大学病院眼科で網膜血管増殖性腫瘍と診断された49例49眼を対象として,診療録をもとに後ろ向きに検討した.
結 果:初診時の平均年齢は47.0歳,腫瘍径は平均3.0 mmであった.腫瘍の局在は下耳側が35%と最も多く,次いで上耳側22%,耳側20%,下側16%の順であった.併発症は網膜内もしくは網膜下滲出物が57%,網膜前膜43%,滲出性網膜剝離29%であった.治療は網膜光凝固が61%,冷凍凝固が37%,硝子体手術が37%の症例に行われていた.3か月以上経過観察が可能であった41例41眼における視力(logarithmic minimum angle of resolution:logMAR)の平均は初診時0.24,最終時0.19で,初診時と比較して最終時視力に有意差は認められなかった.視力予後は併発する網膜障害に随伴しており,初診時腫瘍径との相関はなかった.
結 論:網膜血管増殖性腫瘍の診断確定時における重症度や併発症は多様であり,治療については症例に応じて最善の対応を考える必要がある.(日眼会誌122:572-579,2018)

キーワード
網膜血管増殖性腫瘍, 臨床像, 治療, 予後
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〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学臨床医学系眼科学分野 川上 摂子
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