論文抄録

第122巻第8号

臨床研究

翼状片の進展率に基づく重症度分類の検討
宮田 和典1), 子島 良平1), 森 洋斉1), 徳永 忠俊1), 徳田 祥太2), 南 慶一郎1)
1)宮田眼科病院
2)鹿児島宮田眼科

目 的:角膜径に対する翼状片先端部位置による重症度分類を提案し,術前の角膜不正との関連性,および,各重症度における術後の角膜形状回復時期を評価し,重症度分類の有用性を後ろ向きに評価する.
方 法:初発翼状片切除術を行った454例552眼に対して,術前,術後12か月までの角膜形状解析データより,平均屈折力,乱視度数,surface regularity index(SRI),高次不正乱視(HOI)を求めた.角膜輪部から翼状片の先端部位置までの距離と角膜径の比を進展率(%)とし,進展率が角膜半径の1/3以下を軽度(G1),1/3より大きく2/3以下を中度(G2),2/3より大きい場合を重度(G3)と重症度分類した.各重症度における,平均屈折力,乱視度数,SRI,HOIを比較した.また,切除術後において,術後12か月時レベルになる時期までを形状回復期間とした.
結 果:進展率は,範囲2~56%(平均:28.3%)で,G1:41眼,G2:391眼,G3:120眼であった.術前では,平均屈折力,乱視度数,HOIは,重症度に伴って有意に増加し(p<0.001),SRIはG3のみが高かった(p<0.001).術後12か月時では,平均屈折力とSRIに重症度間で差はなかったが,乱視度数とHOIはG3が有意に高かった(p<0.045).術後12か月のレベルまでに回復する期間は,G1は3か月以内,G2はSRIが6か月以降,それ以外は3か月以内,そして,G3は平均屈折力とSRIが6か月以内,乱視度数,HOIが3か月以内であった.
結 論:3段階の進展率で比較的簡便な重症度分類ではあるが,角膜形状の不正の状況をよく反映した.また,切除手術後の角膜形状回復時期との関連性も示し,臨床現場で有用であると考えられた.(日眼会誌122:586-592,2018)

キーワード
翼状片, 進展率, 高次不正乱視, フーリエ解析, 重症度分類, 翼状片切除術
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