目 的:白内障術後のグレア,ハロー,周辺部のちらつき,黒い影などの症状はdysphotopsiaと呼ばれ,主に眼内レンズに起因するといわれている.今回我々は,白内障術後のdysphotopsiaの有無についてその発生率および発生に関与する因子を多変量解析にて検討した.
対象と方法:山王病院にて2017年8月から2018年2月までに白内障手術を施行し,術後矯正視力1.0以上を得ることができた199例199眼(男性101例,女性98例)を対象とした.術後はアンケート調査を行い,まぶしい,光の輪が見えるといった症状をpositive dysphotopsia,周辺部の三日月状の影が見えるという症状をnegative dysphotopsiaとした.Dysphotopsia症状の有無を目的変数,年齢,性別,眼内レンズ材質(シリコーン,アクリル),眼内レンズ度数,角膜屈折力,角膜乱視度数,眼軸長,瞳孔径を説明変数としてロジスティック回帰解析を行った.
結 果:術後,dysphotopsiaを訴えた例は全体の25.6%(positive:23.6%,negative:3.5%)であった.ロジスティック回帰解析にて年齢(r=0.357,p=0.039),眼内レンズ材質(r=-0.411,p=0.018)の2つが有意な因子とされた.眼内レンズ材質別ではシリコーン,アクリルにおいてdysphotopsia例はそれぞれ17.5%(positive:16.7%,negative:0.9%),36.5%(positive:32.9%,negative:7.1%)であった.
結 論:年齢が若い白内障手術例では,dysphotopsiaの発生を考慮し,眼内レンズ素材を考慮する必要がある.(日眼会誌123:32-38,2019)