論文抄録

第123巻第12号

症例報告

複雑性腎盂腎炎に関連した両眼性内因性真菌性眼内炎の1例
小川 令, 福岡 秀記, 永田 健児, 外園 千恵
京都府立医科大学眼科学教室

目 的:悪性腫瘍の合併など免疫低下状態にない患者が複雑性腎盂腎炎に続発し両眼性内因性真菌性眼内炎を発症した症例を経験したので報告する.
症 例:10年以上前に京都府立医科大学附属病院(以下,当院)にて両眼全層角膜移植の既往がある82歳女性.複雑性腎盂腎炎を発症したため近医の内科に入院となり,抗菌薬点滴を行われ全身状態が改善したため退院となった(腎盂腎炎の原因菌は特定できなかった).退院2,3日後から両眼の視力低下を来し,当院を受診した.当院受診時に両眼に炎症細胞を多数認めたため,ぶどう膜炎と診断し副腎皮質ステロイド点眼による治療を開始した.しかし,1週後の再診時には眼内の炎症は悪化しており,左眼前房蓄膿と両眼底に白色病変を認めた.血液培養検査では菌は検出せず,炎症反応の上昇やβ-Dグルカンの上昇,C-reactive proteinの上昇もみられなかった.入院後2日目に右眼,8日目に左眼の硝子体手術を行った.手術時に採取した左眼の硝子体液からCandida albicansが培養同定され抗真菌治療を開始し,治癒した.摘出された尿路結石,尿管ステント,尿培養から後日Candida albicansが検出されたため,両眼性の内因性真菌性眼内炎と診断した.
結 論:複雑性腎盂腎炎に続発し内因性の真菌性眼内炎を発症する可能性があるので注意を要する.(日眼会誌123:1095-1100,2019)

キーワード
真菌感染症, 眼内炎, カンジダ属, 複雑性腎盂腎炎
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