論文抄録

第123巻第2号

症例報告

特集 学会原著:第122回日眼総会
関節リウマチに随伴した難治性強膜炎に対してインターロイキン6阻害薬が有効であった2症例
長野 瑛里子1), 武田 彩佳2), 由井 智子2), 堀 純子3)
1)日本医科大学武蔵小杉病院眼科
2)日本医科大学付属病院眼科
3)日本医科大学多摩永山病院眼科

背 景:関節リウマチ(RA)に随伴した難治性強膜炎治療中にインターロイキン6(IL-6)阻害薬を導入し,強膜炎が消退した2症例を経験したので報告する.
症 例:症例1は52歳女性.25歳時よりRAに対しメトトレキサート(MTX)とプレドニゾロン(PSL)内服で加療されていたが,難治性強膜炎が発症し当院紹介となった.当院受診後,PSL内服漸減に伴いRAと強膜炎の再燃を認め,生物学的製剤の導入が検討された.抗tumor necrosis factor(TNF)-α製剤の一次無効の既往があったため,トシリズマブ(TCZ)が導入された.導入2か月後に強膜炎は消退し,以後,再燃を認めない.症例2は44歳女性.33歳時よりRAの診断でMTX,エタネルセプト(ETN)を投与されていた.経過中,強膜炎を発症し局所および全身副腎皮質ステロイド治療が開始されたが改善せず当院紹介となった.当院受診後,びまん性強膜炎に対し免疫抑制薬点眼と非ステロイド性抗炎症薬内服を追加したが,強膜炎は遷延し,内科ではRAに対しETNの効果減弱の可能性を疑われ,ETNからTCZに生物学的製剤が変更された.TCZ導入後,強膜炎は改善傾向となり,導入後3か月で消退した.以後,再燃を認めない.
結 論:RAに対する副腎皮質ステロイド治療や免疫抑制薬,抗TNF-α製剤に抵抗性の強膜炎に,IL-6阻害薬が投与され,強膜炎が消退した2例を経験した.IL-6阻害薬は難治性強膜炎に対する治療選択肢となりうる.(日眼会誌123:128-134,2019)

キーワード
強膜炎, 生物学的製剤, トシリズマブ, 関節リウマチ
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