論文抄録

第123巻第2号

臨床研究

周辺部角膜穿孔に対する治療的表層角膜移植術の術後経過
川村 裕子1), 吉田 絢子1), 白川 理香1), 豊野 哲也1), 宮井 尊史1), 山上 聡2), 臼井 智彦1)3)
1)東京大学医学部眼科学教室
2)日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
3)国際医療福祉大学医学部眼科

目 的:周辺部角膜穿孔に対して治療的表層角膜移植術(LKP)施行症例の術後経過について検討すること.
対象と方法:対象は東京大学医学部附属病院で2004年6月から2016年9月までに,角膜周辺部穿孔に対し治療的LKPを施行した症例17例17眼(男性9例9眼,女性8例8眼).原因疾患,手術回数,再穿孔までの期間,最終穿孔閉鎖の有無,移植片の種類,移植片の大きさと形状,術前後視力変化(穿孔後術前視力と術後1か月の視力),複数回手術施行した症例の視力変化,内服薬使用の有無について後ろ向きに検討した.
結 果:原因疾患はMooren潰瘍が17例中7例(41.2%)で最多,続いて膠原病関連角膜潰瘍が3例(17.6%)であった.LKP術後再穿孔までの期間は,半年以内は13件中8件(61.5%)であった.観察期間中最終的な穿孔閉鎖は17例中16例(94.1%)で得られた.手術ごとの術前後視力変化は,改善が10件(45%),悪化が5件(23%),不変が7件(32%)であったのに対し,複数回施行例での初回術前と複数回施行後の視力変化は,改善が1例(17%),悪化が3例(50%),不変が2例(33%)であった.術後の副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の全身投与は病状の安定に有用であった.
結 論:周辺部角膜穿孔の原因は自己免疫性の潰瘍が多く,これらの症例に対しては術後早期の再穿孔に留意し,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の全身投与を含む慎重な術後管理が求められる.(日眼会誌123:143-149,2019)

キーワード
周辺部角膜潰瘍, 表層角膜移植術(LKP), Mooren潰瘍, 膠原病関連周辺角膜潰瘍, 免疫抑制薬
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〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学医学部眼科学教室 吉田 絢子
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