目 的:線維柱帯切除術後の濾過胞を有し,眼瞼下垂を生じた眼に対する眼瞼下垂症手術(挙筋腱膜縫着術)の有効性と安全性を検討すること.
対象と方法:2016年5月から2017年11月までに東京大学医学部附属病院眼科で線維柱帯切除術の既往,濾過胞を有する患者で眼瞼下垂症手術を施術された患者18名19眼を対象とした.濾過胞の位置,術前の挙筋機能,術前・術後1,3,6か月の瞳孔上眼瞼距離(MRD),瞼裂高,眼圧,角結膜上皮障害(フルオレセイン染色スコア),涙液メニスカス高,Schirmerテスト,術後合併症に関して検討した.
結 果:平均年齢72.6±10.3(平均値±標準偏差)歳,濾過胞の位置は上耳側12眼,上鼻側7眼,術前の挙筋機能は11.1±2.3 mm,術前/術後1,3,6か月のMRD,瞼裂高は有意に改善を認め,眼圧,フルオレセイン染色スコア,涙液メニスカス高,Schirmerテストは有意な変化を認めなかった.術後濾過胞に漏出や感染を認めた症例はなかった.術後1か月の時点で瞳孔領にかかる眼瞼下垂再発を1眼1症例に認めた.その他18眼において,自覚症状の改善を認めた.
結 論:濾過胞を有する眼瞼下垂症において,挙筋腱膜縫着術は有効かつ安全に施行できることが示唆された.(日眼会誌123:402-406,2019)