論文抄録

第123巻第4号

臨床研究

加齢黄斑変性眼の脈絡膜厚に関連する遺伝子
山城 健児1)2), 細田 祥勝2), 吉川 宗光2), 三宅 正裕2), 辻川 明孝2)
1)大津赤十字病院眼科
2)京都大学大学院医学研究科眼科学

目 的:最近注目されているパキコロイド疾患群に対する理解を深めるために,加齢黄斑変性(AMD)眼の脈絡膜厚に関連を持つ遺伝子の発見を目的として,ゲノムワイド関連解析を行った.
対象と方法:京都大学医学部附属病院で採血を行い,網膜光干渉断層計検査画像を用いて中心窩下脈絡膜厚が測定できたAMD患者707例を対象として,587,048箇所の一塩基多型(SNP)について脈絡膜厚との関連解析を行った.
結 果:5.0×10-8未満のp値を示すSNPはなかったが,1.0×10-5未満のp値を示すSNPはRPL13AP13/RPS19P4COL22A1/KCNK9ARMS2/HTRA1の3領域に認められた.ARMS2/HTRA1 rs10490924(A69S)はp=3.78×10-5と比較的低いp値を示していたが,CFH rs800292(I62V)とVIPR2 rs3793217は脈絡膜厚との有意な関連は示さなかった(それぞれp=0.666,p=0.412).眼軸長が測定されていた348例を用いて,年齢,性別,眼軸長で補正して解析を行ったところ,p値はrs10490924:2.91×10-3,rs800292:0.399,rs3793217:0.0409であった.
結 論:ARMS2/HTRA1とAMD眼の脈絡膜厚については候補遺伝子研究でも有意な関連が報告されており,ARMS2/HTRA1はAMD眼の脈絡膜厚を決定する重要な遺伝子であると考えられた.既報を考え合わせるとCFHがAMD発症前の脈絡膜厚を決定し,ARMS2/HTRA1がAMD発症後の脈絡膜の萎縮性変化に影響を与えているのかもしれない.RPL13AP13/RPS19P4COL22A1/KCNK9およびVIPR2については再現性の確認が必要である.(日眼会誌123:407-412,2019)

キーワード
加齢黄斑変性, 脈絡膜厚, ゲノムワイド関連解析, ARMS2/HTRA1, CFH
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〒520-8511 大津市長等1-1-35 大津赤十字病院眼科 山城 健児
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