論文抄録

第123巻第4号

症例報告

産業用ドローンの回転翼により眼球破裂および上下涙小管断裂を同時に生じた1例
竹田 一徳1)2), 福岡 秀記2), 塚本 倫子1)2), 外園 千恵2)
1)済生会滋賀県病院眼科
2)京都府立医科大学眼科学教室

背 景:近年,ドローンが一般に普及し,空中撮影や農薬散布,玩具用などさまざまな用途のものが手に入るようになった.その一方で,ひとたび操縦を誤れば凶器となりうることは想像に難くない.今回,農薬散布を目的とした産業用ドローンによる眼球破裂および上下涙小管断裂を同時に生じた症例を経験したので報告する.
症 例:69歳の男性.農薬散布のための産業用ドローンが左眼に衝突し多発外傷を伴い当院を救急受診した.診察にて上下涙小管断裂,鼻骨骨折,過去の白内障手術時の強膜創の離解に伴い硝子体と虹彩の一部脱出を認めた.眼球破裂により左眼の視力は光覚弁となっていた.まず受傷同日に強膜縫合および硝子体手術を行い,その4日後に上下涙小管再建術を安全に施行した.術後,強膜裂創は閉鎖し涙道通水試験により上下涙小管再建を確認できた.最終矯正視力は0.01であった.
結 論:ドローンの回転翼は非常に高速に回転し,かつ鋭利であるため重篤な眼外傷を来しうる.眼科医の立場から保護メガネの着用を徹底させるよう働きかける必要がある.(日眼会誌123:413-417,2019)

キーワード
ドローン, 眼球破裂, 涙小管断裂, 眼外傷, 骨折
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